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バルセロナ、売上高記録更新の 裏で見え隠れする財政危機の兆候


史上最高額でパリSGへ旅立ったネイマールの移籍金により、2017-18シーズンの売上高でクラブレコードを更新したバルセロナ。昨季はピッチ内でも2冠を達成しておりマネージメントの成果、と言いたいところだが、巧妙なカラクリによって隠された実態があった。

文 木村浩嗣

 冬の移籍市場でのフレンキー・デ・ヨンクとケビン・プリンス・ボアテンク獲得は、ジョセップ・マリア・バルトメウ会長下の今のバルセロナを象徴しているように見える。1つはかつてのレアル・マドリーのように大型補強を魅力増に結び付けるやり方、もう1つはクラブカルチャーからの脱却である。

 2017年夏にネイマールを強奪されたことで、何かのタガが外れた。巨額の移籍金を手にしたフロントはウスマン・デンベレ(1億2000万ユーロ)や翌冬のコウチーニョ(1億3500万ユーロ)などに史上最高額の3億6000万ユーロを費やす。昨年夏は比較的大人しかったが、今度は来季からの加入となるF.デ・ヨンクに7500万ユーロである。

 ネイマールの移籍金2億2200万ユーロが計上されたおかげで、2017-18シーズンの総収入は前年比29%増、史上最高の9億1400万ユーロを記録した。景気の良いことばかりだが、その裏で財政的危機を表す指標が2つある。

 1つは年俸の高騰。ネイマールが去ったにもかかわらず2017-18のトップチームの年俸は約1.5倍になり、2015-16の売上高全体を上回るとんでもない額になった。前述の史上最高の売上高をもってしてもこの年俸インフレは吸収し切れず、サッカー以外のセクションも含むスポーツ選手全体の年俸が売上高に占める割合は70%に高騰した。健全経営の目安が55%だから、これは明らかに危険水域。前年の反省から今季は年俸の7%減を目標としていたが、イニエスタパウリーニョアンドレ・ゴメスらの放出で果たして達成できたのだろうか?

 2つ目は膨れ上がる負債。クラブがソシオ総会に提出した決算書によると、その額は1億5700万ユーロ。これでも凄い額だが実際はこの3倍以上ある、と言われている。負債の計算方法はいくつかあるのだが、クラブは伝統的に採用していた方法を止め、基準の緩いプロリーグ協会(LFP)方式を採用、見かけ上の圧縮を図ったうえでこの額なのだ。1年前、バルトメウ会長自身が負債額を2億4700万ユーロと認めていた。それが今、実際のところはどうなっているのか。

 クラブ規約には、負債額の上限を超えれば会長以下、執行部が辞任しなければならない、と定められている。このペナルティを恐れ、規約に負債額の計算方法が規定されていないのをいいことに、一種の粉飾が行われたのだった。


失われる“バルセロナたるもの”

 お金の話からスポーツ面に話題を移せば、F.デ・ヨンクの獲得の裏でデニス・スアレスアーセナルへレンタル。K.P.ボアテンクが来る直前にはムニルが放出されたし、ネイマールの代役になるはずだったジェラール・デウロフェウも1年後に売却済みである。鳴り物入りでやって来る新戦力に追い出される格好で、下部組織育ちの選手がクラブを後にする例が続いている。カンテラーノがトップチームに定着したのは2013-14にトップ昇格したセルジ・ロベルトが最後。地元で愛されプレースタイルを受け継いだ下部組織出身者をベースにロマーリオミカエル・ラウドルップロナウジーニョら世界的なアタッカーを連れて来て、コンペティティブでしかもコストを抑えたチームを作る、というモデルは、特にバルトメウ会長の代になってないがしろにされているように思える。補強選手の人選という点でもパワー系のパウリーニョアルトゥーロ・ビダル、K.P.ボアテンクは、例えばクライフの好みからは外れるものだ。

 折しも、カンプノウからの客離れが続いている。テロと独立による政情不安定で観光客が減少した影響で、昨季の平均観客数は 約 6万8500人。前年比9000人減と落ち込んだ。今季は約7万5200人(収容率76%)と回復したものの、過去最高だった2015-16の7万7900人には及ばず、期待したほどではない。

 是が非でもCLを獲りたい、という執行部の願いは伝わってくるが、その代償にバルセロナバルセロナたるものにしてきた大事なものを失うのでは、損な取引のように思うが……。